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2008年10月31日 (金)

築地のフォーラム報告

森・里・川・海・自然再生フォーラム in 築地
築地魚河岸と語る森川里海 報告

2008年10月25日(土)築地にて開催しました。

■築地市場を探検
午前中はエクスカーションとして、築地市場を見学しました。60人ほどが3班に分かれ、市場事務所の方に案内していただき、魚市場、青果市場などの説明を受けました。土曜日とあって場内の料理店や小売り可能な店は観光客などでにぎわっています。「お客さんが来られるのはありがたいですが、本来築地市場は卸売りなどの業務市場です。そのことを理解していただき、車が往来していますので、安全には十分気を付けてください」と、来場者へのお願いがありました。築地市場の敷地や建物は東京都が管理運営し、その中で各卸会社などが数多くの品物を扱っています。早朝2時から明け方にかけてがもっとも忙しい時間帯です。午前中もまだまだ荷さばきする人たちが先を争うように往来しています。最近では、大手のスーパーと生産地が直接取引を拡大していることなどで、市場の機能が変わってきているといいます。「築地市場の実情を知っていただき、これからの市場のあり方について考えて欲しい」とのことでした。
この後、昼にかけて活動団体や生産者が提供した米、いくらなどを築地の方が料理した、海と川のいくら飯、牡蠣汁が用意され、旬の新鮮な食材と築地ならでは味を試食しながら、会場に用意された活動団体のパネルを見ていただきました。

■フォーラム
午後からは、築地市場の中のホールでフォーラムを開催。一般参加者のほか、築地市場関係者、行政関係者、森川里海の活動団体関係者らが集まり150人規模となりました。司会は、築地仲卸の文化団体銀鱗会メンバーで今回のフォーラム窓口をしていただいた●●さんが行いました。

【挨拶】
主催者を代表して、自然再生を推進する市民団体連絡会より、海辺づくり研究会の木村尚が挨拶しました。
「森、里地、川、海での活動は、その範囲だけでなく、つながっていくことでそれぞれの自然がよくなります。そのために連携しています。築地関係のみなさんも、海がよくなり、自然が再生し、魚が増えないと、売るものがなくなるという危機感があると思います。全国に活動が起きていますので、それにより得られるものを、消費者、料理店、卸などのみなさんにも理解していただくことが必要だと思います」と趣旨を説明しました。

続いて、築地市場場長の森本博行さんから、「この講堂は昭和10年にできましたが、ここで自然再生のフォーラムなどが行われるのはおそらくはじめてでしょう。市場関係者だけでなく、いろんな関係者と連携して、海の、魚の、市場のことを考えてください」と挨拶をいただきました。

【基調講演】
「日本沿岸の海 美しく豊かな海ってどんな海」
水中カメラマン木原英雄さん(元NHK報道カメラマン)
現在も、NHKの契約カメラマンとして、水中撮影、報道の仕事をされています。
木原さんは、アメリカのフロリダ水中大洞窟、高知四万十川のアカメの映像など様々な水中のスクープ的映像を撮影しています。その40年のキャリアから、この10年ほどの海の変化が激しいことを紹介しました。
40年前の海は、伊豆でもヒロメやカジメなどの大きな海草が海底から生えており、うねりで揺れて、潜っていても船酔いするぐらいたくさんの海草が生えていたそうです。
沖縄から北海道まで、様々な姿のある日本の海ですが、木原さん自身や水中カメラマン仲間の話から、深刻な状況が見えてきます。
(木原さんのお話しより)
サハリン南部では、海面近くの水温が21度ありました。水深20mぐらいでは6度ほどと低い水温ですが表面温度が高くなっています。夏から秋にかけて、伊豆大島で海面水温24、25度。北海道の冬は0~-3度。温度はばらばらですが、その温度が上がっているとの指摘もあります。
北海道の知床で、シイラが泳いでいる映像が撮影されています。
新聞の記事には、宮崎などでとれるサワラの漁獲量が石川県で10年前5トンから、昨年1997トンになったとあります。津軽海峡を越え、三陸沖を下がっているようです。岩手県でもサワラがとれるが、食べ方が分からないという記事がありました。魚が北に上がっているという指摘もあります。
沖縄では、スクが幼魚の頃に玉を作って泳ぎます。それを網ですくって塩辛くして食べています。スクの親はアイゴです。このアイゴが北上し、海草の芽を食べているのではないかという話があります。藻場にはたくさんの海草がはえています。そこに卵を産み、魚が育ちます。その藻場が全国で消えています。
日本海の福井県でも、太平洋の静岡県でもアイゴがみられ、藻場が減っています。伊豆大島や東京湾にも来ているようです。
伊豆では今年、ヒロメが全然生えず、サザエがとれなくなっています。
伊豆大島の藻場がなくなった岩場には、1mぐらいに育ったサンゴがあります。海草がなくなり、サンゴが着床して生えています。和歌山県串本町のテーブルサンゴはなくなり、水温が高いところに適応する枝サンゴが海を埋めています。
一方、沖縄のサンゴは勢いをなくし、枯れたり白化したりしています。高水温やオニヒトデの食害が多いようです。
照間島に行くと、サンゴが白くなって死んでいます。オニヒトデもおらず、海水温の上昇もありません。死んだサンゴの表面にこぶができていました。オーストラリアではアワビが着床できず死ぬ病気が発生しています。この夏、八丈島ではアオウミガメが手や足に腫瘍をたくさんつけていました。これらの原因は不明です。
もちろん、豊かな海もあります。
今年、復帰40年の小笠原に行きました。エダサンゴが以前より増えていました。マグロアナという場所があり、復帰直後よりも多いイソマグロが200尾ぐらい回遊していました。
小笠原のエビダンチという場所は、水深25~30mの岩場です。その縦についた割れ目に、伊勢エビの仲間がたくさんいます。1m近いものから40センチぐらいのものです。そこは、以前と変わらない豊かな海でした。
東京湾アクアラインの「海ほたる」近くを潜ったら、ワカメがびっしり生えて、ボラ、イワシ、スズキ、深いところにメバルがいました。豊かな海です。お台場の海にも潜りましたが、そこは、アマモの試験栽培の場所です。10cmぐらいのスズキの稚魚がいました。東京湾は、豊かな海です。タカアシガニ、たくさんの種類のサメなどがいます。
豊かな海の一方で海の変化があるという現実です。魚の種類によっては住む海域が300kmも北上しているという大学の研究があります。
藻場が減っているのは、必ずしもアイゴだけが悪いわけではありません。複合的な原因でしょう。
海では、温度差や塩分濃度差によって比重が変わり、深いところから栄養分が上に上がり、それがまた下に下がります。高い表面水温では、海水の比重が軽いため、下におりなくなります。水温が高い状態が続き、栄養分がまわらず、海草なども育たなくなります。最近の気象の激しさによって、真水が猛烈な勢いで海に入ることがあります。海水よりも真水は比重が高く、海面近くに滞留して、対流が起きなくなります。また、近年波浪が激しくなり、藻が生えるあたりの波がきつく、藻を飛ばしてしまうこともあると言われています。

最後に木原さんは、
「今後、地球の本来のリズムによる温度上昇、海水温上昇、あるいは人為的要因での上昇などいろんな原因が考えられます。
ただ、私自身が感じるのはここ10年の変化が激しいことです。本当は、危機的な取材よりも、楽しい海を撮影し、感動するほうがいい。そういう海を見続けていきたいと思います」と語りました。

【子どもたちの活動発表】
■横浜市金沢区西柴小学校の活動
2003年から横浜市金沢区でアマモ場再生の活動がはじまり、市民、民間企業、漁協、水試、大学、地元小学校などが、金沢八景-東京湾アマモ場再生会議を作って、現在も続けています。このなかで、まず、西柴小学校が特設クラブ「西柴アマモ隊」を結成し、かつ度をはじめました。環境教育活動としてアマモの花枝採取から、種子選別、種まきなど様々な活動を行いながら、アマモ場の一生調べや、アマモ場に戻ってきたカレイ、アオリイカなどの調査を行っています。活動場所は、城ヶ島、野島公園、海の公園、金沢漁港、芝漁港、ベイサイドマリーナなどで、子どもたちの積極的な取り組みに回りの大人たちも影響を受けて活動の広がりが出ています。今はたくさんの小学校が参加し、100人近くが参加しているそうです。

■港区港陽小学校の活動
レインボーブリッジに近い、海のそばの小学校です。12クラス339人の小規模校ですが総合的な学習の時間などを使って、地元お台場での自然再生活動に取り組んでいます。
明治時代頃は、アマモ場、二枚貝の漁場、海苔の養殖場などが広がっていた海ですが、子どもたちはほとんど海を知らずに育っています。きれいでない、きたない、くさい海という認識のなかで、故郷の海を身近に感じるため、まず、海水ビオトープを学校につくり、ミニチュアの干潟、岩場、海エリアに全校児童がペットボトルで海水を汲んで入れるところからはじまりました。1年生には干潟の体験、2年生は生きもの観察、3年生は干潟の生きもの分布調査、4年生からアマモ場の再生活動として教室内でアマモの苗を育てて移植する活動を開始し、5年生は海苔の養殖、6年生は海水の研究、全学年で海浜清掃作業をしています。アマモ場をお台場に再生したことで、スズキやメバルが戻ってきました。海苔の養殖は、東京湾で43年ぶりのことでした。東京都漁連が船を出し、千葉県の海苔養殖家が乗って、指導するという関係性ができるのは、子どもたちが間にいたからです。

【パネルディスカッション】
コーディネーター NHKエグゼクティブアナウンサー 国井雅比呂さん
パネリスト
漁業者 岡山県日生町漁業協同組合代表理事組合長本田和士さん(代理で岡山県農林水産部水産課・鳥井正也さん)
仲卸 東京都市場卸協同組合理事長・伊藤宏之さん
料理店 寿司屋第三春美鮨・長山一夫さん
消費者 ウーマンズフォーラム魚代表・白石ユリ子さん
消費者 市場魚介類図鑑主催島根県水産アドバイザー・ぼうずコンニャクさん

これらの報告を受け日本全国の村や町を歩いている国井アナウンサーがコーディネーターとなって生産者、流通、消費者の立場からのパネルディスカッションが行われました。

■漁業者の再生活動
漁業者の立場として、岡山県日生町で20数年間アマモ場の再生活動を自主的に続けている漁協代表の本田さんをお招きしていましたが、都合により代理として、一緒に活動を続けている鳥井さんが出席しました。岡山県日生町漁協の活動は、行政の支援を受けずに取り組まれており、鳥井さんは仲間のひとりとして現場で毎日のように海に潜って海の変化を追い続けています。
日生町には、昭和20年代、590haのアマモ場がありましたが、昭和46年82ha、昭和60年12haと減りました。稚魚の放流事業をしてもうまくいかず、漁協の本田さんたちが、原因をアマモ場とみて、再生活動を始めました。20年以上、今も、漁師が手弁当でやっています。これまでに6500万粒以上を植え、現在、10数ヘクタールです。10数年前は、真っ暗な海でした。最近、透明度も良く、草原のような風景になり、メバルの稚魚、コウイカの卵も見られます。一番減った昭和60年から80haと、6倍以上になり、関連するワタリガニ、マダイ、コウイカ、クマエビなどの漁獲量が増えています。
アイゴについては、日生町の食文化として珍重されます。手のひらサイズを定置網で取り、町内で消費します。大切な食文化ですが、以前は0トンでした。アマモの芽を食べる恐れもありますがそれ以上にアマモ場が回復しています。
成果が感じられるようになったのはここ5年ほどで、それまでは本田さんの未来を見据えた強力な確信とリーダーシップが頼りでした。これまでは年配の漁師が中心でしたが、今まで牡蠣とアマモは関係ないと言っていた人たちも活動してくれるようになり、若い漁師も積極的になりはじめました。後継者が育っているのは、再生活動による漁獲量があるからだと思います。

■市場から見る海の変化
東京都市場卸協同組合理事長の伊藤宏之さんは、半世紀に渡って仲卸をしています。築地の仲卸は、かつて1300軒ほどありましたが、800を切っています。
昭和30年代後半は、経済成長の時代を反映して栄えた時代です。料亭では、値段のことは言わず、魚の品質に厳しかったです。ご用聞きをして聞いた板長さんの話が今も糧になっています。
当時築地には、千葉を中心に40キロ樽のアワビが届きました。赤みを帯びたマダカアワビで、1kgを超えるものが届きました。
今、千葉県大原にはどこにも、アワビはいません。アワビは、底引き網などではなく、海女さんがとって出荷するものです。乱獲ですぐにいなくなるものではないです。
アワビは、中国、香港などが、一時期、漢方用に買い上げていました。これは市場価格より高かく、その間、乱獲や密漁があったのかも知れません。いまや1kgのアワビは探すのが至難ですし、マダカではなく、最大600gのイガイが主流です。
かつて千葉から漁師が朝取りの車エビを背負って持ってきていました。大小を仕分けして、寿司屋、料理屋などに納めていました。今、江戸前の本物の車エビは少ないです。
芝前の海の魚が本当の江戸前の魚と聞いています。市場の中にも「芝」の字の屋号の店がたくさんありました。今は1軒だけです。
房州産のタイ、砂地のヒラメ、有名でしたが、タイは神奈川の佐島、ヒラメは青森、三陸、常磐産になりました。東京湾のアナゴは、伊勢が主力になりました。
海の汚れ、環境の変化に左右されて入荷している魚が変わっています。春先、夏に近づいてもブリが上がっているといった変な現象が起きています。
定置網は待ちの漁法で、根こそぎ取るのではなく、魚が入るのを待つ漁法です。魚が通らなくなると、定置網漁はだめになります。小田原では道路によって夜の光で定置網に魚が入らなくなりました。
また、消費側も変わりました。旬が先取りされ、初ガツオが3月になっています。
日本は沿岸漁業が環境変化や200海里で漁業そのものが縮小しています。一方、仲卸として築地市場は、いろんな魚種を集めなる必要があります。ある時期を境に輸入が増えました。世界最大の購入者として日本は外国の魚のプライスリーダーをずっと続けていました。昨今は、消費地がグローバル化し、中国が大きな消費地になりました。プライスリーダーの地位が厳しくなっています。荷受けさんと手を結んで、築地にたくさんのいい魚を呼び、買っていただく苦労をこれから真剣にやっていかなければならないと思っています。
海の再生で、かつていろんなところでみられた魚類が戻ればと思います。小柴のシャコがなくなり、シャコのツメがなくなりました。ハゼの子も目に付きません、博多のウニ、小粒のウニがとてもうまい。かつては江戸前にありました。海の再生でこれらも見られるようになるかもと期待しています。

■寿司屋からみた産地と流通
第三春美鮨の長山さんは、寿司職人歴43年です。築地から仕入ながらも、全国の魚の産地を歩き、どこで、どんな漁師が、どのように漁獲し、どういう流通で届くのかを自分で確かめています。
朝、仕入れして、店で資料整理して、それぞれの魚の産地、旬、大きさ、活け締めか、浜締めかなどを、手書きして毎日張り出しています。
築地に来始めた頃は、高度成長で、築地に勢いがありました。魚を知らないで仕入れに来ると小馬鹿にしたものです。何も教えてくれません。仕入れる方もバカにされるのではと思って聞きません。ある程度魚を分かってから、仲買人に質問するようになると、意外と産地のことなどを知らないのです。だから、いい品質の魚があれば、自分で産地に行って、調べて、どうしていいのかを確かめました。25年ほど前、淡路島の沼島からアジが来ていました。一本釣りのキアジです。いいアジです。
マアジには、ノドグロとキアジがあります。ところが今は獲れなくなりました。ノドグロとキアジの中間種になりました。
旬もどんどん変わってきています。スミイカは、初夏に途切れるものですが、今は年中築地にあります。
食の変化はたとえば、戻りガツオです。かつては、戻りガツオなどは使いませんでした。今は初ガツオより戻りの方が圧倒的な人気です。
クロアワビも大変です。中国バブルで乱獲で取られ、いいアワビが少なくなりました。たまにあると中国の干しアワビ業者に買い負けしているようです。
東京の寿司屋は江戸前の魚に関してはこだわります。かつては赤貝、蛤などたくさんとれましたが、今は、アナゴとシャコぐらいです。小柴のシャコは2010年まで操業停止になりました。江戸前のアナゴも、量がとれません。東京の寿司屋は江戸前のアナゴをほしがります。
私は、産地と密接に関連を取り、情報をもって、仕入れしています。今の時期はこうだと太刀打ちしないと大変です。プロ同士の商売ですから、丁々発止です。仕入れとは、仲買との勝負です。
最近、事故米が流通し、メーカーなどが被害者面をしていますが、メーカー側が見破られなかったのは、おかしいです。値段で見破れるはずです。それを分からなければいけません。もちろん、素人である消費者をだますのは論外です。
最近、江戸前のアナゴ、サバ、シャコ、ヒラメなどで油くさい魚があります。江戸前だけでなく、いろんな産地でもあります。漁場の再生も必要ですが、環境問題として漁業の再生、魚の質の劣化なども問題です。
日本中の漁協産地を回ってみて、漁師の収入が低すぎると思います。とにかく漁師が豊かになるようなことを考えなければ。海は、一般の人ではなく漁師が守っているのです。

■消費者に海や魚の教育を
ウーマンズフォーラム魚代表の白石さんは、消費者が海のこと、魚のことを知らず、魚を食べなくなったことに危機感を感じています。
海に恵まれた日本で、海や魚を語る消費者がおらず、子どもが魚の姿を見ないで育っています。農業に比べて、漁業の消費者教育がまったくされていません。そこで、ウーマンズフォーラム魚を作りました。
日本には、5kmにひとつずつ6000の漁協、川を入れると7000の漁協があります。
浜を歩いて、シャイな漁師と少しずつ親しくなりました。
今、若い母親にタダで魚の勉強会をしても誰も来ません。そこで、1996年から小学校で勉強会をはじめました。子どもがいると母親も来ます。漁師の母さんに、父さんがとった100匹の魚を持って来てもらいます。67産地に協力してもらい、東京都下で67回やりました。
漁師には、消費者は何も知らないから、消費者とどの産地がつながるかが勝負よと、働きかけています。
「海彦クラブ」…浜のかあさんと語ろう会、こどもとサカナ体験ツアー、こども・海とサカナのフォーラム、海彦レターなどの活動を続けています。
日本は、世界で6番目の海を持ち、海水量は4番目です。海底にはメタンハイドレードもあり、資源大国になりえます。そんななか、魚の自給が5割を切り、輸入が5割を超えているのは問題です。
海の再生について、台所の外は海です。台所からきたない水を流さないでと言うと、子どもはすぐに解釈してくれます。海は、黙っていてきれいになるものではなく、身近なところから気を付けなければならないと思います。すぐに海がきれいになるわけではなく、ひとりひとりがまず、きれいにすることです。

■多様性を食べる
ぼうずコンニャクさんは、インターネット上に「市場魚貝類図鑑」を開設しています。ぼうずコンニャク歴27年で日本中の魚市場を見て、食べる視点から魚の紹介を続けています。
30年ほど前から築地にも来ていて、買わずに同定するために見ているので、よく水をかけられました。
魚に触れて50年、子どもにも1400種類ぐらい食べさせていますが、最近は、自宅に発泡スチロールが届くと「これがサカナだったら父ちゃん殺す」と言われます。今は、魚は父ひとりで食べています。
食べものは塩を除けば、すべて生物です。だから、多様性でいろんな種類を食べる方が自然には優しいです。ひとつの魚種ばかり食べるののではなく、いろんなものを食えばいいのです。生きものが好きだから、いろいろ食べ始めました。魚については、東京、名古屋、大阪の値段は分かっています。
私は、寿司は日本を救うと思います。多種多様な魚を食えるのは寿司しかありません。
島根のアドバイザーをしていますが、島根でも多様な魚を食おうと言っています。島根の人がうまいと思っていたら島根の魚も売れますよ。

---築地ではどのくらいの魚種がありますか?

誰も数えていないですが、おそらく1700~1800種類です。ただ、ツブ貝やバイ貝は同定されておらず、信じられないほどの種類があります。築地に来ない魚はありません。

---多様な魚を食べるのがいいというのは直感ですか?

27才の頃、釣りをやっていて、釣れずに、近くの定置網漁で捨てる魚をもらって食べていました。おいしいのになぜ捨てるのか? 生物多様性を守れと言われる中、いろいろ食べるのがいいと気がつきました。

---マグロのように極端に1種類にするのではなく、いろいろ食べるのがいい。宮城のドンコを軍艦にしたらとてもおいしい。どんこ祭りまであります。とてもおいしいが捨てられていました。下の下という意味のゲンゲも、今や高い魚になっています。日本には、さまざまな食べられる魚があり、漁獲でき、それを自然再生で育てることができるのですね。

そのため、生産者、消費者、料理をする人、役人さんがなかよくやってもらうことが必要です。
それから、多少あくの強いものでも食べましょう。食べることを意識して食べた方がいいです。養殖よりも天然がいい、野菜でも時期のものを食べた方が時季はずれの促成よりもいいということです。
郷土料理や料理の歴史は捨てる必要がないと思います。島根でも、むしろマイナーなものを残して欲しいと言っています。料理の多様性です。

【主催者団体からのコメント】
森 樹木環境ネットワーク協会 澁澤寿一
森の管理や整備をやってきました。その向こうには山があり、里があり、川があり、海があります。アイゴと藻場の話がでました。すべてのことがバランスです。バランスを再生させていくことが自然再生の道だと思います。バランスを悪くしているのが人間です。食や子育てを通して、バランスを回復することが必要だと痛感しました。

里 里地ネットワーク 竹田純一
里とは、里地里山、田園地域、農山村です。奥山ではなく、人が自然に働きかけてきた場所です。棚田、田畑、家畜という暮らしです。そこにさまざまな生きものがいます。
先日、トキが野生復帰しましたが、トキのエサ場は、用水路や田んぼ、棚田です。トキがいなくなったあと、人もいなくなり、過疎になりました。里を守る活動とは、棚田を復活し、水環境を守るだけでなく人を元気にする活動です。
海ともつながります。海にアマモがたくさんあるのに、翌年なくなった。調べると、上流の山の手入れや田んぼの農薬や生活排水にも原因がありました。山や里の生活が、川を通じて海につながっていることを知らないからです。気がついたときに、取り戻すことができます。

川・全国水環境交流会 山道省三
北海道から沖縄まで川をもう少し地域の人に愛着のもてるいい川にしようという人がたくさんいます。ホタル、魚、伝統行事、郷土食も含めて、地域に復活していこうというネットワークです。今日は海の話ですが、川も同じ事です。自然復元、自然回復をやっていましたが、それは何のためかといえば、地域にとっていい川を考え直そう。いい川には、おいしい水、魚、水の恵みがあります。そういうふくらみのある地域の川にしていこうということです。先日、全国大会をしまして、各地域の川の恵みを持ってきて欲しいという宴会をやりました。全国から様々な食が集まりました。そういうことを、海、里、山、つなぐ川のネットワークを強化して一緒になってやっていきたいと思います。

海・海辺づくり研究会 木村尚
私もアマモの活動をしています。実はアマモは海苔養殖の天敵です。木更津に海苔の養殖家がいます。アマモが入ると海苔の品質が落ちたと返品されます。しかし、アマモの生えないところの海苔がいいのでしょうか?海苔養殖家は、子どもたちのアマモの活動を見ると、文句が言えません。だから、アマモが入る海苔はいい海苔だとう発想をもつことも必要です。生産者だけでなく、流通や消費者にも分かってもらわなければなりません。自然豊かに再生し、豊かにしようという人たちや場所の魚を高く買い、説明して食べさせ消費者にも知ってもらうことが必要です。

【関係省庁コメント】
国土交通省関東地方整備局港湾空港部長、環境省自然環境局自然環境計画課長、林野庁計画課●●、水産庁増殖推進部漁業資源課●●から、今日のフォーラムを聞いてのコメントをいただきました。

【終わりに】
自然再生を推進する市民団体連絡会代表で、科学ジャーナリストの佐藤年緒が閉会の挨拶をしました。
本日は、熱のこもった議論で40分以上時間をオーバーしましたが、最後までおつきあいいただきありがとうございます。
5年前に、4つの市民団体が交流をはじめるところから森里川海の連携がはじまりました。同じ自然再生をめざしながら、フィールドが違うと活動は違います。その交流は大切です。
市民団体が所管している役所も、こういう場で一緒に同席して未来を語れたことは素晴らしいことです。それは、生きものを守る環境省が魚を食べる団体を認めるという姿として表れます。地域が元気になり、豊かな食が守れる、文化が守れる運動ができていることに喜んでいます。このフォーラムを受け入れてくださった築地市場の皆様に深く感謝いたします。

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